唯識と論理療法―仏教と心理療法・その統合と実践

これはおととい、紹介しました仏教とトランスパーソナル心理療法 - 信心の王者たれ!の中盤過ぎで出てきた岡野守也氏の著作からとなります。

論理療法についてのいくつかの洞察についてお話ししていきます。
その第1は、ABC理論をまとめたもので、『人生の困った出来事に対して自分を論理的に混乱させるのは、主に自分自身である。感じ方は考え方に大きく影響される。いやな出来事やがっかりするような出来事があった時、意識的であれ無意識的であれ、合理的な考え方を選ぶと、その結果、健康的な否定的感情が起こり、非合理的な考え方を選ぶと、不健康な否定的感情が起こる」というものです。ここは、論理療法と、「ものごとがどう見えるかはその人の心しだい」という唯識の考えからがぴったり重なるところです。

唯識と論理療法―仏教と心理療法・その統合と実践 岡野守也著(佼正出版社)第2章現代の方便・論理療法 唯識と論理療法の一致点 P207】

(註:論理療法の基本的洞察の2番目)「自分が自分の考え方で自分を余分に不幸にしている」という考え方です。それが未だに続いているのは、その道理に合わない思いこみにこだわってそれを持ち続けることを意識的にせよ無意識的にせよ、今、自分が選んでいるんだというのです、過去や現在の悪い出来事は影響を与えるにはちがいないけれど、それそのものが呼kろを乱しているのではなくて、自分の今持っている人生観が悩みの主な源泉だというのです。
この考えからも、「ものごとがどう見えるかは自分の識・心のあり方しだいである」という唯識の洞察とぴったり一致しています。


論理療法の基本的な洞察の4番目に「幼児期体験や過去の条件付けは、自分の心理的な混乱の根本的な下人ではない。自分が自分自身を混乱させているのである」というものがあります。

唯識と論理療法―仏教と心理療法・その統合と実践 岡野守也著(佼正出版社)第2章現代の方便・論理療法 唯識と論理療法の一致点 P210-P211,P213】

論理療法の基本的洞察の3番目は、「感情的に混乱しやすい自分の性格を変える、魔法のような方法はない。譬え自分の心を乱し、自分を惨めにしているのは自分だとはっきり自覚しても、努力と練習がなければ事故変容は生じない、自分で自分の不幸の源泉である非合理的な思いこみを変えたり、たとえ不快でもそれに反する行動をしてみる努力と練習を重ねない限り、自己改善は実現しない」というのものです。


「私はまず、自分を幸福にしたいと考えています。だけど、自分が幸福になるために際して自分の周りの人も幸福でないと、自分が幸福になるための邪魔になるから、周りの人にも幸福になってほしいと思いますね。さらにまわりの人を幸福にできると、自分に誇りがもてるから、自分もいい気持ちになれますしね。だから、他人と一緒に幸福になった方がより幸福になれると思うんですが、どう思いますか?」


唯識と論理療法―仏教と心理療法・その統合と実践 岡野守也著(佼正出版社)第2章現代の方便・論理療法 唯識と論理療法の一致点 P216-P217,P219】

大乗仏教のモットーに「自利利他」ということばがあります。これがとてもできていると思うのは、まず自利があってその後で利他があるという順序です。


普通の理屈では自分の実力で自分をたっぷりと幸福にできる人間が、余力で他人も幸福にしてあげられるのではないでしょうか。実力がそうとうないと、なかなか他人を幸福になんかしてあげられません。無理をするとかえって共倒れになったりします。


大乗仏教の発送が優れていると思うのは、財産や地位を持つことを否定していないということです。


唯識と論理療法―仏教と心理療法・その統合と実践 岡野守也著(佼正出版社)第2章現代の方便・論理療法 唯識と論理療法の一致点 P220=P222】


論理療法を学びたい人のための参考としましては『自己変革の心理学―論理療法入門』伊藤順康(講談社現代新書)がよいとのことです。この本も読み終わり次第UP予定です。


唯識と論理療法―仏教と心理療法・その統合と実践


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