チベット医学

三体液


『ギュー・シ(四部医典)』によれば、ニェパ(体液)のバランスの乱れこそが不健康の原因であって、404種の病気はそこから生じます。このようなバランスの乱れは、4つの要素(食生活、ライフスタイル、カルマ、季節)のいずれかに端を発します。仏教でいうマリクパ(無明)も、チベット医学では病因の1つとされています。


ルン(風):体の働きをつかさどります。通常は臀部と生殖器の間に位置していますが、中性のエネルギーとして他の2つのニェパ(ティーパとベーケン)と混ざり合い、72 000本の脈管を通って体のすみずみまで運ばれます。
 ルンには体をコントロールする力があり、神経系と平行して流れています。呼吸をつかさどり、五感を統御します。他の2つのニェパのバランスを整える働きがあります。血液とリンパ液が体内を循環するのもルンの働きによるものです。
 ルンのバランスの乱れは血管系の病気につながります。また、ストレスによって体内のルンが過剰になるとソク・ルン(「気息」などに置き換えられる青い滴、人体のすべての活動をつかさどる根源的な生命力)の流れが内面に向かうため、精神疾患が生じます。ルンは72 000本の脈管を通って体内を流れているため、ルンのバランスの乱れは実際のところあらゆる病気に関わってくるのです。
 ルン型:やせていて冷え性、頭の回転が速く口が達者、議論好き名性格。ストレスや不安、不眠、鬱病に悩まされやすい。ニェパのバランスが崩れると、消化器官が真っ先に影響を受け、睡眠障害もよく起こる。


ティーパ(熱):代謝作用に関わるエネルギ−であり、横隔膜と肝臓のあたりに位置しています。
 ティーパは変容の力として、火の元素と密接に結びついています。人体においては内分泌系の働きと、酵素を分泌して食物を消化する際に発生する熱と深く関わっています。ティーパの過剰は肝臓、胆嚢、小腸の病気を引き起こします。
 ティーパ型:丸みを帯びた体型、空腹や喉の渇きを感じることが多く、健全な食欲の持ち主。汗をかきやすい、体臭が強くなりがち、飲み込みが早く、議論で相手を説得することができる。ねたみや怒りを抱えがち。体の中で弱い部分は肝臓、胆嚢、小腸。熱性の病気にかかりやすく、皮膚によく症状が出る。


ベーケン(粘液):このエネルギーはもともと液状であり、頭部に位置します。
 ベーケンは潤滑作用をつかさどるエネルギーであり、体内の水分量を調整し、関節の動きを滑らかにします。臓器、骨、筋肉を作る同化作用とも結びついており、記憶と精神集中を助ける働きもあります。ベーケンのバランスの乱れは浮腫や粘液が出る病気を引き起こすことがあり、糖尿病にも関与しています。
 ベーケン型:がっしりした体型(太り気味な人もいる)、体は冷たく、皮膚が薄いタイプ。空腹や喉の渇きを我慢することができ、寝ることが大好き。昇華に時間がかかるため、粘液の病気にかかりやすい。三体質のなかで最も金銭感覚に長けている。


五大元素
 この世の万物は「土・水・火・風・空」の五大元素からできています。土の元素が形を作り、水が湿り気を与えます。火は食物の適切な消化を、ハゼは血液と体液の循環を促し、空は元素間の調和をお助ける働きがあります。

仏教の病気観


 自己への執着が、あらゆる苦悩と病気の根本原因。そこから煩悩が生じ、その根源には三毒「貪欲・怒り・無知」があり、ニェパのバランスを乱れを引き起こす。貪欲はルン、怒りはティーパ、無知はベーケンに影響を及ぼす。過剰になると、それが病気として現れる。

 チベット医学が素晴らしい効果を発揮するのは、どの病気もルンに起因しており、それゆえに心因性であるという点を、根本原理として受け入れているからです。
 シュニャータ(空性)は万物の本性であり、病気の根本原因である三毒(本来は実在しない自己にすがりつくこと)を消滅させる究極の薬です。この煩悩を元から断てば、どんな病気も治ります。自己に執着するマリクパ(無明)の状態から、空性を悟ったりリクパ(明知)の境地へ移行してはじめて、病気を根本から永遠に克服することができるのです。

補足として、チベット以外の仏教医学でもこの病気観は同じです。

体質に合わせたライフスタイル


ルン型:タンパク質をたくさんとり、1日3食の規則正しい食生活を心がけましょう。ルンが過剰な人がしっかり地に足をつけるには、朝食が欠かせません。プロテインドリンクを飲んで1日元気に過ごしましょう。夕食は夜遅くになってからとると体がだるくなり、寝付きが悪くなります。また、夜遅く食事することで肝臓に負担がかかり、翌朝起きるのがつらくなってしまいます。
 甘味・酸味・塩気の強い食べ物は体を内側から温めるので、ルン型の人には最適です。3種のニェパのバランスを保つには、朝食にポリッジやミューズリー、夕食にはナツメグ入りの肉スープの他にアボガドや野菜炒め、豆のキャセロールなどの脂っこい料理をとりましょう。スープやシチューにゴマ油を加えるのもおすすめです。
 ルン型の人が口にする食べ物は、加熱してあることが第1条件です。
 ルンのバランスが乱れたり過剰になっているときには、ナツメグをできるだけ料理に加え、ゴマ油やオリーブ油の入った濃厚な肉のスープ、バターで調理したミートキャセロールなど、脂っこくてしっとりしたものを食べるようにしましょう。


ティーパ型:甘味・渋味・苦味のある食べ物をとるようにしましょう。ニンニクなど渋味のある食べ物は脈管を収縮させてニェパを本来の位置にとどめておく働きがあり、レモンやハーブ類などの苦味のある食物は胃の粘膜を刺激して消化液の分泌を促します。一方、ラム肉やカレー、スパイシーなエスニック料理は、体内で熱を生じさせるのでさけること。野菜はなるべく生でそのまま食べるのがよく、たとえば冷たい豆腐、スプラウト栄耀たっぷりなのでお勧めです。しぼりたての生ジュースはティーパ型の人にぴったりの飲み物です。ティーパの働きで体内の熱が過剰になると、医おなかでガスや遺産が増えることがあります。このような症状が出たら、愛慕利立ての生ジュースや生のヨーグルトで体を冷やしましょう。また、ストレスが原因で腸内のバクテリアのバランスが乱れ、おなかが張ることもあります。この症状にはプロバイオティクス(体に良い微生物)のサプリメントか生ヨーグルトがよく効きます。
 ティーパ型の人は食生活にスパイスを多少は取り入れてもかまいませんが、コリアンダーサフランターメリックなど体を冷やす作用のあるものに限ること。唐辛子に代表される辛いスパイスは、ティーパの熱性の体質に拍車をかけるおそれがあるので避けましょう。
次のようなメニューがおすすめです。朝食:イエローグレープフルーツジュースかレモンのジュースと蜂蜜入りヨーグルトの組み合わせ。昼食:サラダがよい。豆のミックスサラダのターメリックライス添えか、サーモンにミックスリーフサラダを添えてライムドレッシングをかけたもの。夕食:鶏肉か魚に葉もの野菜とライス


ベーケン型:消化の良い熱性の食べ物をとり、昼食を1日のメインの食事にすること。食後に軽い運動をすると、消化を助け、ニェパの流れをスムーズにします。
 朝食は蜂蜜をかけたパンケーキか生ショウガ茶やチャイなどの温かい飲み物がお勧めです。昼食はプロテイン入りミルクシェイクがギリシャ風ヨーグルト(水気が少なく濃厚)があれば十分です。ニンニクには脈管を収縮する作用があり、ティーパ型と同じくベーケン型にも適しています。濃厚なカレーは、ぺー件型の人向きで、体を温める効果があります。トウガラシを料理に加えるのもよいでしょう。夕食にはクスクスやキヌア、米などを炊いて、ヒヨコ豆やレンズ豆、ラム肉の入ったカレーを添えれば、食欲を十分に満たされるはずです。

季節にあわせたライフスタイル

 
 春、体を洗う際にはレンズ豆の粉をソープパウダーに混ぜたものを使うと、余分な粘液を体から取り除くことができます。体を鍛える活動を開始して、新陳代謝を促して冬の間に蓄積した粘液を散らす必要があります。チベット医学では春は過剰な性行為を慎むようにといわれます。男性にとって精液を失うことは生命のエッセンスを失うに等しいので、写生はなるべく控えた方がよいでしょう(この時期に牡蠣などの食材を摂れば、syせいで失われる亜鉛を補うことができます)。
 夏は、火の元素の力が最大になるので、サウナなどのヒーリング法は避けること。mうぃそうに適した季節であり、夕べに戸外で行うのがベストです。青空のしたで太陽を背にして20分間の瞑想をすれば、日中のストレスが広大な空に解き放たれ、リラックスすることができるでしょう。ティーパ型の人は夏の暑さによってティーパが増加します。
暑い時期に定期的にスイミングをして、ティーパの過剰によるバランスの乱れを整えましょう。
 チベット医学の教えによれば、どの体質の人も秋分が来たら好きなだけセックスをしてよいことになっています。特にルンが優勢な人はストレスをため込みやすいので、それを発散するのにセックスが有効だと考えられています。体の自然な欲求を無理に抑えることは、四部医典では奨励されていません。排尿を我慢すると腎臓結石ができますし、正常な呼吸が妨げられるほど肉体を酷使すると、心臓病になるといわれているからです。


季節に合わせた食生活
 春に「苦味」「辛味」「酸味」のある食べ物をとれば、ベーケン病(粘液の病気)の予防になります。
レモン、ショウガ、煮リンゴなどが適しています。蜂蜜をお湯に溶かして飲むのもお勧めです。ベーケン型の人は、春になったら催吐薬を飲み、冬の間に蓄積した粘液を放出するとよいでしょう。
 夏は土の体質の人も、ラム肉や辛いスパイス入りのカレーやキャセロールなど、熱性の食べ物を避けなければなりません。そのかわりにサラダを食べ、タンパク質はオーガニックの山羊チーズや生の豆腐からとりましょう。飲み物は詰めた居城ワインかビールが適していますが、氷をたくさん入れて薄めて飲むこと。夏に1番注意しなければならないことは、水分をたっぷりとって脱水症状を防ぐことです。
 秋は体質にかかわらず、体内の熱をかき立てる食べ物をとるようにします。たとえばレモンの変わりにリングを選び、生野菜のサラダはやめてにんじんや大根、為す、カボチャなどの野菜をローストやスープにして食べるとよいでしょう。
 秋から冬に移り変わるにつれて食欲が増し、熱性の食べ物を好きなだけ食べても大丈夫になります。サラダ、加熱していない豆腐、冷たい飲み物など、体を冷やす食物は避けること。


病気の予防
 家の中を清潔に保ち、毎日換気をしてできるだけ新鮮な空気を取り入れることが、病気の予防になります。
 春から夏の間は、水で薄めたエッセンシャルオイルを家中にスプレーするとよいでしょう。レモングラスには優れた消臭効果があり、ゼラニウムはバランスと調和を保ちます。ティーツリーには強力な殺菌作用があります。

本草


ニェパの沈静と浄化
『ギュー・シ』によれば、チベット薬には沈静と浄化の2つの作用があります。
 沈静薬は特定のニェパの過剰を押さえ、体内の正しい位置に戻します。
 浄化薬は余分なニェパを除去し、脈管のつまりを取り除いて通りをよくするために処方されます。このタイプの薬と治療法には、座薬、浣腸、催吐剤、経鼻剤などがあります。



薬局方


ミロバラン
甘味・酸味・苦味・塩味・辛味・渋味の6味、重い。滑らか・冷たい・柔らかい・軽い・粗い・辛い・鋭いの8種の力、寒い・熱い・暖かい・冷たい・濃厚・希薄・湿っぽい・粗い・軽い・重い・安定した・動きのある・鈍い・鋭い・穏やか・乾いた・柔らかいの17種の性質をすべて備えたあらゆる病気を治す究極の妙薬


北の冬山「カンチェン」―熱性病に効く薬草
サンダルウッド(白檀)、甘草は、熱性の病気を冷ますのに用いられるハーブであり、月のパワーに影響を受けます。チベット医学の教えでは、炎症から熱が生じて体に広がり、細胞の修復が破滅に追いつかないと細胞組織に繰り返し炎症が起こると説きます。西洋の科学では大半の病気はストレスに対する炎症反応であり、生化学的反応を起こしてダメージを修復しようとする体の自然な働きであると見なしますが、チベット人はすべての病気がストレスによってルンが過剰になることで生じると考えています。


南の電電山「ビクチェ」―寒性秒に効く薬草
このグループに含まれる主な薬草は、シナモン、ショウガ、ザクロ、黒コショウです。太陽のパワーに影響を受けることから、通常は寒性の病気の治療に用いられます。


西の涼しき山「マラヤ」―サントゥク

ナツメグ
あらゆるタイプのルン病に効く薬として、実とオイルが用いられます。ナツメグは意識の座である生命の脈管ソク・ツァに直接作用します。有効成分のミリスチシンには強力な抗炎症作用があり、腸が大腸菌によってダメージを受けるのを防ぎ、化学物質が原因で起こるガンを抑制する効果が知られています。精神の不調を治療する薬が他に見あたらないときは、ナツメグの香りを吸い込むだけでも十分な効果があります。ナツメグにはソク・ツァに流れ込んで攪乱するルンを鎮める働きがあり、心臓病の治療にも使われます。生のナツメグは実はハート型をしており、男性向けの媚薬として用いられることもある。

サフラン
中東ではサフラン風呂は万病を癒すと信じられていました。現代の研究によれば、サフランビタミンB2とカロチン(天延の抗ガン剤)が豊富で、消化器系を守る作用があることが分かっています。チベット医学では甘草への効能が知られ、さまざまな文化でうつ病治療に使われてきました。



家庭でのハーブ活用法


ハーブティー
欧米でストレスの主な原因とされているカフェインの摂取を減らすには、ハーブティーを飲むとよいでしょう。ショウガ茶は体内に分散した熱を消化器系に戻す働きがあり、強力な消炎作用も備えています。コリアンダー茶は暑い季節には体を冷やし、寒い季節には温めます。フェンネル茶は食欲を増進させます。


ハーブ料理
サフランは体内の毒素を排出し、肝臓と心臓の病気を予防する働きがあります。

若返り療法


オオバコの種皮
 小さじ2杯分のオオバコ種皮をコップ半分のぬるま湯で溶き、毎日飲みます。水を含むとオオバコの繊維が溶けてゼラチン状になり、これが毒素を吸収して体外に除去するのです。若返り療法の1週間前からオオバコを飲み始めるとよいでしょう。


下剤と浣腸
 若返り療法の2-3日前には各種ハーブが配合された下剤を服用し、消化器系から不純物を除去するとよいでしょう。必ず医師に処方してもらうこと。
 qあかが襟療法の下準備として、専門の施術医による浣腸を勧められることもあります。腸壁にこびりついた食べ物のカスは腸に負担をかけ、病気の原因にもなるため、浣腸による洗浄で取り除くのです。


ミルクシスル
 シリマリンという成分が含まれており、肝臓を毒素から守り、肝細胞を再生する力があります・体重6.3kgにつき5滴のチンキ剤をコップ1杯のお湯に入れ、ジュース断食の前後3日間は毎日欠かさず飲みましょう。

コリアンダーを食事に取り入れる。

リトリートの数日前から、アルコール・卵・魚・ニンニク・ショウガを断ち、性行為も控えましょう。


浄化の呼吸法
 まず右の鼻孔を左手でふさぎ、右の肺に3回深く息を吸い込んだら一気に吐き出して、体内の汚れた空気を排出します。次に左右を逆にして同じようにします。最後に左右の鼻腔から同時に深く息を吸います。ココでは息を吸って吐くことを3回繰り返し「執着の鳥」「怒りの蛇」「無知の豚」を吐き出しましょう。


薬浴療法
 自分の体質と健康状態にあったハーブミックスをもちいるのがよいでしょう。


若返り効果のある食べ物
 5日間の療養中は、生の野菜、特にスプラウトや豆類など、疲れた体にエネルギーを供給する食材を中心にメニューを組み立てます。栄耀を補うため、オメガ3系必須脂肪酸を含む亜麻仁油を1日に大さじ1杯とりましょう。
 ゴジベリーは若返り療法に使う食材として理想的です。活性化の作用があり、うつ病や不眠などのルン病にかkっている人に活力を回復させる目的で古くから使われてきました。ビタミンCの宝庫です。


ジュース療法
 有機栽培の果物や野菜を使った新鮮な手作りジュースで、体に必要な栄養素を摂取しましょう。1日600mlは飲むこと。ビートの根、ニンジン、セロリ、トマトがお勧めです。イエローグレープフルーツには亜kんぞうの土下しをし、パイナップルには、抗炎症性酵素の一種であるブロメラインが含まれているため、炎症を控えるのに有効です。


マッサージ
 チベット式マッサージの特徴は、施術後に大麦かヒヨコ豆の粉を体に振りかけることです。
 チベット医学ではマッサージは主にストレスへの対処法として用いられます。それ以外の主な用途ではルンが過剰な場合に施します。過度のストレスに対しては、週に3回マッサージするとよいでしょう。陣痛を和らげる方法としても安全で効果的です。

今回の引用は、すべてチベット医学の真髄(ガイアブックス)


似非科学に該当する事柄が何カ所かあり、極力そうした箇所は省き、現実に生かせそうな点のみピックアップいたしました。

天台の小止観、アーユルヴェーダから共通項、生かせる点をこれから提示していきます。


                        チベット医学の真髄
                        チベット医学の真髄

 

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