佐藤順一監督

高校時代以降で、1番好きなTVアニメの監督。
高校以降で、とりわけ印象に残っている作品は、「フルーツバスケット」、「プリンセスチュチュ」、「カレイドスター」、「ARiA」、「のだめカンタービレ」である。
プリンセスチュチュからARiAの3作品を手掛けたのが、佐藤順一監督。
私が始めて見たのは、悪魔くんきんぎょ注意報!までさかのぼる。当時何気に見てしまっていた、セーラームーン。私は、86世代のため、見ていた人が最も多い世代に当たるはずだ。夢中になった男子は、ガリ勉かつオタクのイメージが強い。
きんぎょ注意報!では、キャラが困ると汗を表す巨大なしずくマークを出して困った様子をする手法をアニメではじめて使った作品であり、その後の作品で多用された。
その作風は、おジャ魔女どれみでほぼ出来上がっている。



とにかくよく動く。その点トムとジェリーの流れを感じるところがある。スレイヤーズプレミアムもしていた。
カレイドスターの良さは、つい最近になって知った。なんで当時見なかっただろう。
演出上がりながら、音響監督も務め、多くの監督作品では、第1話で絵コンテを切っている。カレイドスター時代は、週1でコンテを切っていたという。未来少年コナンに負けじと劣らないペースの作成に言葉を失う。そのアニメーターの実力は庵野秀明のお墨付きで、新ヱヴァ劇場版の絵コンテも任されたほど。
この動画では、上記3作品以外では、おジャ魔女どれみゲートキーパーズ新白雪姫伝説プリーティアふしぎ星の☆ふたご姫。アニメの動きに合わせて、曲想が次第に変化していくところがいい。その美しさに圧倒される。この動画で見れるOPを見た印象でしかないけれど。


カレイドスターからはこの2つの動画を。

このアニメのOPの中でもおそらくもっと映像、歌の歌詞、音楽のシンクロ率が最も高い。この次のOP、後半クールのEDはそれに準ずる素晴らしいもの。

GONZO DiGiMATiONから公式配信されている第1話。最初のOP・EDはヘタウマK-POPアーティストが歌っているのだけど、それもヒロインの成長に合わせて考えれば、納得がいくいいもの。粋だな。氏の最高傑作に上がる理由がよくわかる気がする。



プリンセスチュチュからはバンダイ公式チャンネルからの第1話を。OPサビ後のチャイコフスキー 花のヴァルツのメロディで流れる場面の一人バレエはいつ見ても素敵。この作品は、岡崎律子さんと出会った作品でもあり、とりわけ思い出深い。この時代のアニメを見始めたきっかけでもある。バレエ、クラシック音楽が核となった作品から入るのも、実に私らしい。このアニメの人気が低い理由がわからないな。
これを見ると、グレの歌に影響を受けたスコット・ブラッドレーが作曲を担当した

からも影響を受けているのではと思ったりする。
スコット・ブラッドレーの理想とするアニメは、wikiからの引用になるが、

未来のアニメーション映画が、才能豊かな作曲家によるオリジナルの音楽を持ち、スラップスティック風のギャグの代わりに美しく芸術的な物語を伝える、一種の総合芸術となることを夢見ていた。彼はこう語っている。「『ペレアスとメリザンド』を考えてみてほしい。ドビュッシーの神秘的な音楽が、才能豊かなアニメーターによってアニメ化されるのだ。しかも舞台装置はダリで!」

その理想に1番近いアニメーションをこのあたりの作品にみる。


ARiAからは、個人的には、取り上げやすいものが見つからなかったので、簡単にみつかるいい話としては、オレンジ色の日々にを上げたい。
このアニメは、この方の作品としては、激しく動くシーンはなく、その代わりに、徹底したリアリズムによって、デジタル化されたアニメーションの中でヴェネツィアの街を描いていて、細かな一つ一つもらさず描いているところが素晴らしい。1枚の絵画を見るように。ここでも、音楽、セリフ、アニメーションのシンクロは見事。

PS.監督としての最も長く製作期間が長かったおジャ魔女ドレミのOPもクオリティが高い。この作品は、この監督にとって、東映時代、最後の監督作品でもある。

セル画アニメーションの動きに合わせて、オープニングソングが完全同期している。主要ヒロインの声をあてた声優さんが年相応に演じ切って歌ったため、いい意味でピッチがずれているのもここではプラスに作用している。しかし、歌詞が多い歌だ。るろうに剣心 1/2よりも言葉が詰まっているところがある。サビでのマイナーコードを巧みにつかった転調、間奏における耽美なピアノのアクセントが個人的には印象的だ。1999年の第4回アニメーション神戸 AM・KOBE賞(主題歌賞)受賞曲も納得がいくクオリティ。編曲をした、坂本昌之平原綾香『Jupiter』で第46回日本レコード大賞<編曲賞>を受賞した実力者である。
この映像には中毒性がある。


総合芸術でずっと追い求めてきたものは、劇と音楽の一致、そして言葉と音楽の一致にあると思う。その観点において、この監督の作品は素晴らしいと感じている。ただ、それは私の総合芸術無理解が生んでいるものかもしれない。というのは、モーツアルト魔笛」「ドン・ジョバンニ」、アルバン・ベルクヴォツェック」、「ルル」、ルキノヴィスコンティ「ベニスに死す」、宮崎駿となりのトトロ」「もののけ姫風立ちぬ」、高畑勲かぐや姫の物語」といった作品の理解が遅れているため。更に思い起こせば、2003-7年ごろは、地上波で放送していいのかというくらい酷い下ネタアニメがあったなか、ブルックナーなみに鈍感無理解をしていたことが判明。なので、今後、見る作品は、可能な限り、ストーリーは調べつくしてから見ようと思う。やはり私は、文章になっていないとダメなことに、ショック。