クレメンス・クラウス指揮パルジファル バイロイト音楽祭ライブ1953を聴いた

ヴィーンで生まれ育った巨匠ということもあり気になり手に入れた。
まず冒頭から引き込まれる。
1st Violinが初めて、聖餐のメロディを奏でるところ、いい具合にポルタメントがかかっている。
後のショルティ指揮ヴィーンフィルの冒頭と同じかけ方。この効かせ方は他のオケでは聴けない典型的なヴィーン訛り。この訛りでこの作品に引き込まれた経緯もあって、その後はその流れで陶酔して聴いてしまう。この頃から60年代カール・ベームが登場する前のバイロイト祝祭管弦楽団の選抜はヴィーンフィルが多かったとのこと。

次に印象的なのは、ヒロインであるクンドリーが、主人公パルジファルの生い立ちを歌う場面。
妖艶だ、妖艶すぎる。ここでは、ベートーヴェン ミサ・ソレムニスさえ、官能的に演奏してしまうクレメンス・クラウスの本領発揮どころである。ここではマルタ・メードルが絶唱を聴かせてくれる。音質を考えなければ、歴代でもTOPに挙げてもいい箇所ではないだろうか。花の乙女の場面も同様。しかし、ラモン・ヴィナイが歌うと、1匹野獣がいるようなかんじになりその点だけが原点。明るい声質のジェス・トーマス、ルネ・コロ、蔭りを持った声ならペーター・ホフマンが適任ではないだろうか。

最後に、ラストシーンでのパルジファル到着前の聖杯王アンフォルタスの独白。ここで歌われる闇はあまりにも深い。最近陰鬱になっている時に、脳内エンドレスループしたときにはやられた感があった。