Tchaikovsky Symphony No.6

ヴァレリーゲルギエフ指揮の演奏があまりに重く悲痛であり、第3楽章の金管のゴツゴツとした響きがマーラーの第9と似ているように聴こえたために、2度と聴かないでおこうかと思った作品。カラヤン指揮ウィーンフィルの最晩年の演奏を聴いて美しすぎると思い、取り上げました。


この曲は、サスペンス・ホラー作品のおぞましい調べの曲、ベートーヴェンの大フーガ、20世紀の前衛音楽、ストラヴィンスキーの「春の祭典」、マーラーの第8以外の交響曲ショスタコーヴィチ交響曲のテンポのゆっくりかつ短調な楽章(特に第14番、死者の歌)と弦楽四重奏第13-15番同様、うつ病の人には、あまり聴かないことをお勧めします。重く悲痛な響きが、第1楽章、第4楽章を支配していることも理由の1つです。


Wikipediaを見ると、ぞっとするエピソードがありました。

ドイツの精神科医ミューレンダールは、精神病院の入院患者に対して各種の音楽を聞かせるという実験を行なったが、悲愴を流した場合、特に内因性うつ病患者の症状が悪化し、患者によっては自殺しようとすらしたとのことである。

YMORYDEENにも似た逸話が21世紀以降のリマスターCDにも書かれていましたが、そうした結果が出た理由として、この曲は、極めて感傷的であり、扇情的であり、鬱積したものや衝動を爆発させる力があるからではないでしょうか。実は、マーラーワーグナー、初期のシェーンベルク&ベルク、R.シュトラウスと言った作曲家よりもロマン派らしいテイストなのかも知れません。理由は、ベートーヴェンと比べていうまでもなく、ここであげたマーラーシェーンベルクと言ったロマン派から無調音楽への流れを作り、実際に作った作曲家と比べても叙情的で流麗・メランコリックなメロディであり、楽曲の構成も構築的ではありません。そしてオーケストレーションの絢爛豪華さは勝るとも劣りません。一つのフレーズを発展の連結にしたり、半音階上昇させたり、または下降させたりしている結果交響曲第6番第2楽章・第3楽章では、メロディーがかなりリズミカル。RYDEENのように。これはクルミ割り人形にも、同じことが言えるでしょうか。


SEIJI OZAWA /Berlin Philharmonic Orchestra  Tchaikovsky Symphony No.6 Part1

http://www.youtube.com/watch?v=O1KCy3l-AQg&fmt=18


SEIJI OZAWA /Berlin Philharmonic Orchestra  Tchaikovsky Symphony No.6 Part2

http://www.youtube.com/watch?v=ZICd9jNIvD4&fmt=18


SEIJI OZAWA /Berlin Philharmonic Orchestra Tchaikovsky Symphony No.6 Part3

http://www.youtube.com/watch?v=emsVUX4yfp4&fmt=18
第2楽章は、メロディーが美しいです。4分の5拍子という混合拍子によるワルツ。スラブの音楽によく見られる珍しい拍子で、優雅でありながらも不安定な暗さと慰めの様なメロディーが交差します。中間部は一層暗さに支配され終楽章のフィナーレと同様の主題が現れれます。


演奏時間は8〜9分程度。


ピリオド・オケの方が、甘さが少ないとのレビューも目にしますので、その方が、べたべたにならずより聴きやすくなるのではないだろうかと思っています。そうした演奏をしているロジャー・ノリントン指揮の演奏を聴いてみたいです。


SEIJI OZAWA Tchaikovsky Symphony 6 BPO Live 2008 Vienna

http://www.youtube.com/watch?v=ZPvts94L64I&fmt=18
一番華やかで一番疲れるところかも知れません。オーケストレーションがとてもいいです。このハイテンションはまるで躁状態を見るかのようであり、第4楽章の悲痛に向かって行く悲劇への行進曲のように聴こえるのです。この曲は、故郷のパチンコ屋のCMで流れていてメロディだけは小学校の頃から知っていましたが、悲愴の第3楽章だと知ったのは、ほぼ2ヶ月前のことです。
マーラーの第9の第3楽章と同様に、金管がかなり高揚させていくため、ウィーンフィルのような柔らかい音色のオーケストラやシャルル・デュトワのような軽く軽快に奏する指揮者でないと、個人的には受けつき難いです。


Tchaikovsky - Charles Dutoit - Symphony No.6 Mvt.4

http://www.youtube.com/watch?v=M1J5912WbAQ&fmt=18
マーラーの第9のフィナーレと同様に、アダージョゲルギエフの演奏は悲痛で重すぎました。カラヤンが指揮したウィーンフィルでの最晩年の演奏では、全楽章が極めて甘美に、そして第3楽章・第4楽章は早めのテンポで演奏。
チャイコフスキーは初演後、周りの人々に「この曲は、私の全ての作品の中で最高の出来栄えだ」と言った理由がわかりました。その色彩美とメロディの良さとそれらにリズムがシンクロしているからではないかと思うのです。私がブログで知り合った常勝関西さんは、『カラヤンは、美しすぎる』と仰っていました。なぜ、カラヤンの演奏は美しすぎるのか、ようやくわかりました。カラヤンの指揮を知るキッカケを下さった常勝関西さん、Danke shoen.(ドイツ語でThank you very mach)



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