WEBERN

ルネサンスからヴェーベルン以前の芸術音楽はヴェーベルンに繋がり、彼以降の芸術音楽は、ヴェーベルンから始まる。

身内の不幸の苦悩の中生まれた作品から。
悲しみと異常なまでの強靱さを同時に示しうる音楽の創造。悲しみと強靱さの結合を可能にする方法を探し抜いた音楽がこうした調べ。また、ここではあまりにも短い時間に凝縮されていることに注目。マーラーブルックナーの長大な交響曲を凝縮した作風と評される所以である。


Webern Five Pieces For Orchestra Op.10

http://www.youtube.com/watch?v=4-4IUIGOsdk&fmt=18


音楽は実質的に非拍節的で、テクスチュアは変幻自在、音色は小節ごとに変化、強度は希薄で、フレーズは、僅か6小節のセクションがある。
各楽器のバランスは取れており、この曲の冒頭のユニゾンに見られるように、すべて異なる楽器でのオーケストレーションされ、洗練の極み。


Anton Webern: Drei Kleine Stuecke Op.11

http://www.youtube.com/watch?v=lXNDkLK57HA&fmt=18


これほどまでに、短くも悲しみをぶちまけた曲を私は知らない。この作曲家が、ピアニッシモエスプレッシーヴォ(弱い音で感情を爆発)の作曲家と言われる所以であろう。
ジョン・ケージは、この頃のヴェーベルンの音楽から、音楽の極意は間と考え、偶然性の音楽(すべてをプレイヤーに委ねる音楽)を開拓した。もっともヴェーベルンは、亡くなる前に、図形楽譜(音を図などにして曖昧に示した楽譜)を考案しようとしていたとする説がある。
ゲーテが指向した病的なものを、ロマン的といった最たる例のような作品だ。
実際、本人にとっても居心地が悪い調べであったと述べている。



そして、後年の作品
Webern: "Symphony" Op. 21

http://www.youtube.com/watch?v=I8nseOWRwvw&fmt=18


Webern: "Concerto For Nine Instruments" Op. 24

http://www.youtube.com/watch?v=4OPfHfWBZLY&fmt=18


ヴェーベルンの直弟子である、ルネ・レイボヴィッツは、「世界全体を表現したものであり、考え方は、限りなく最高の美的・様式的一体性を見ました」と感じた。


Webern Variations for piano

http://www.youtube.com/watch?v=s_E5nB5PLWE&fmt=18


このピアノの曲は、ジャズが好きな人はその甘美な響きから好きになるかも知れない。実は、私自身がそうである。


Webern Cantata Op.29

http://www.youtube.com/watch?v=YZq3r0-bLRM&fmt=18

http://www.youtube.com/watch?v=b3RMic1rQ2E&fmt=18

幾何学模様にシンメトリックに流れる音形。1度使用されたら他の11音が鳴り終わるまで繰り返しのない12の半音。カノンの形で形を変えて繰り返される。バッハを極限まで鬱屈したような調べ。極めて構築的なこの作品群は、後にこのアプローチを進化させた作曲家達に絶賛され、より長く生きていたらこのアプローチを進化させていたはずだと考える人たちが存在している。最初に取り上げた作品と比べて、より清澄に、ダイアモンドの如く硬き響き。自由で、変化に富んでいるゆえに、幻想的と言えるのかも知れない。オーケストレーションは、軽く、儚く、そして病的なまでに繊細で優雅。また個人的な意見を言えば、Op.10と交響曲について言えば、ストラヴィンスキーラヴェル、ファリャ、ショスタコーヴィチにも勝るとも劣らない楽器の音色の生かし方だ。そこでは、出過ぎないように、すべての楽器が立っているのだ。
ホロヴィッツの弟子であるブーレーズは、「高度な構築性と、自由な完成の飛翔の融合」と絶賛した。
ただ、不協和音しか鳴らないためであろう、どこまでもバッハやベートヴェンに勝るとも劣らない構築性、論理性を誇っても、やはり病的なロマン性、表現主義をゆうしていて、聴いているだけではすべてがわからないように意図的に書かれていること、あまりにも個人的な表現になりすぎて、普遍性を勝ち得ないであろう。ただ、このヴェーベルンにしかない個性と論理と響きなどがそこにはある。それらを知るために、聴くことは、新しい世界へと誘ってくれる。

後年の作品からは、まったくイメージできない、習作にして秀作を


http://www.youtube.com/watch?v=uS4jtglXfmg&fmt=18

http://www.youtube.com/watch?v=Q7Gl25RrY34&fmt=18

ヴェーベルンは、バッハの編曲でも傑作を残している。


J.S.Bach/Webern - Ricercata

http://www.youtube.com/watch?v=7NFSBj6ZntA&fmt=18


ここでも、楽器の音色を引き出しなおかつ、元々の深遠さを共に引き出している。


1番驚いた点は、ゲーテの自然に対するアプローチと同じと言うことである。それは分析的であると同時に思索的であり、極めて細かい部分にも注意をいきわたらせながら、統一と普遍的な原理を追い求めていく姿勢である。事実、ゲーテの詩に歌を書いたり、協奏曲やカンタータの説明でゲーテの引用をしている。また自然こそ最高の教師としていた点もそうである。深遠な芸術家にはやはり共通した姿勢があると改めて痛感する。



参考文献
ニューグローヴ音楽大事典
ヴェーベルン 西洋音楽のプリズム
ウェーベルンについて
ヴェーベルン《弦楽四重奏のための五つの楽章》作品5



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