続き、そして描きたいもの

あれからも私は色々と聴いていた。
今、無職と言っていい状態にあえて追い込んだ。
今、今まで酷使してきたダメージがすべて跳ね返っていることと、数キロは平気で歩く体力はあるものの、極度の無気力状態でもある。
しかし、しなければならないことは多い。未来に向けてすることの整理、残務整理に今月は結局は明け暮れるものと思われる。

聴いていたものの、列挙を。

Gabriel Faure,String Quartet 1st movement

http://www.youtube.com/watch?v=etWcl9ruzUw&fmt=18
ソナタ形式を土台に、提示部、展開部、再現部、第二展開部、長大なコーダという、ブルックナーソナタ形式に見られたような、次々と積み重なり、大きなクライマックスに達する音楽の動きを、違う形であらわしている。

Gabriel Faure,String Quartet 2nd movement

http://www.youtube.com/watch?v=EaVma4b_R1k&fmt=18
夢幻的超越的で、なんと沈痛な調べだろう。その点は、ブルックナー弦楽五重奏曲、レーガークラリネット五重奏曲のそれぞれ勝るとも劣らないと個人的には思っている。そこには、苦悩も、忍耐もある。そして『コーダは涙で曇った微笑みのような、不思議な魅力的な不協和音を持つ』*1。そしてさらなる高みへと昇ってゆくような。

Gabriel Faure,String Quartet 3rd movement

http://www.youtube.com/watch?v=NhVvBQtl08g&fmt=18
枯淡の中に湧き上がる若々しさ、情熱、美穂と名歌とその重なり合い。形式は、第一楽章に似ている。ベートーヴェン弦楽四重奏曲第14番のフィナーレ、大フーガの終盤、ブルックナー弦楽五重奏曲にも通じるように思う。


Arvo Paert Sinfonie NR.4 "Los Angels" 1st moviemnt

http://www.youtube.com/watch?v=mNMEOd7-AxQ&fmt=18

Arvo Paert Sinfonie NR.4 "Los Angels" 2nd moviemnt

http://www.youtube.com/watch?v=jP5QAhP_dV4&fmt=18

Arvo Paert Sinfonie NR.4 "Los Angels" 3rd moviemnt

http://www.youtube.com/watch?v=TuaqTtyX23Q&fmt=18
シンプル極まる天国的ハーモニーと同じくシンプル極まるリズム、そこには歌心があり、効果的に、かつてアヴァンギャルドを突き詰めた者ならではの不協和音がはさまれている。最晩年ゆえの諦念や哲学的なところがある。20世紀後半前衛音楽全盛の中、ショスタコーヴィチグレツキブリテンと並んで戦後最もポピュラリズムを獲得した作曲家の一人である。

Briten String Quartet NR.2 C,Op.36

http://www.youtube.com/watch?v=PXUH-qTIGkA&fmt=18

3つの主題群が登場し、展開部への出発点として提示、3つの主題は全てを同時に統合する凝縮された再現部で頂点に達する。

Britten String Quartet No. 3, Op. 94より

http://www.youtube.com/watch?v=TR00rQDB6Sk&fmt=18

http://www.youtube.com/watch?v=7GQF20749qM&fmt=18

http://www.youtube.com/watch?v=FUkSCufGWzM&fmt=18

http://www.youtube.com/watch?v=vaXyHZIThp8&fmt=18

http://www.youtube.com/watch?v=p_Wl-pGY23s&fmt=18
ヴェニスの情景、そしてヴェニスに死すをオペラ化した作者のこの作品ゑhの個人的施策と諦念、それは、マラ9の影響を露骨に受けながら、白鳥の歌にふさわしい、至純のハーモニーによって終わる。響きは、晩年のショスタコーヴィチと近い世界にある。

今、不協和音の開放を行う前のシェーンベルクヴェーベルン、リャードフ、ラヴェル、レーガー、モーツァルトブルックナー、晩年のペルト、フォーレショスタコーヴィチ、インドや新しい複雑性、ナンカロウのリズム、フリアン・カリージョが築き上げた微分音体系を純正律的なハーモニーに適合して微分音体系を統合した先に、新しい未来があるように思えてきた。それは、豊かな感性を伴って生まれるはずだ。そしてそれは、さらなる高みへと駆け抜ける自己超越的で力強く、色彩的で表情豊かで、均整の取れたものになるはずだ。

イランの古典声楽より

http://www.youtube.com/watch?v=JnvQCuPf_V8&fmt=18
故・小泉文夫氏が最も美しい音楽、最後に聴きたい音楽に選んだ音楽イラン声楽のタハリール。
これは、西洋では味わえない美しさに満ち溢れている。
また声楽と器楽の統合の点において、ドイツ・リートすら超えてしまった作品だ。


http://www.youtube.com/watch?v=0O1yb4ougfo&fmt=18
アルプス山脈の真っただ中、厳しい気候の中とは思えない、垢抜けた明るさとちょっぴり哀愁に溢れた、素朴な歌。なんと明るく力強くたくましいことか。ここには、カンツォーネにも負けない歌心に満ち溢れている。ヨーデルによるシラブルに満ち溢れた歌い方も好きだ。実は、オペラやリートよりも好きである。コーラスで追っかけっこする。至福の歌たちである。

*1:H・ハルプライヒの論文参照