2013年8月17日(土)ミューザ川崎特別演奏会 & 交響曲第1番《HIROSHIMA》の世界展

ミューザ川崎で、初めて聴くオーケストラの生の音。ゲネプロ以外では初めてのことだった。
私の取った座席は、2階席RAブロック。舞台背面ながら、音のバランスはそこそこ良かった。しかし、最も近い楽器はチューバと打楽器。次いでトランペットになるこの場所。当然、トゥッティでは、ヴァイオリンとホルンは、かなりかき消されてしまう。それだけが、仕方のないことであった。それを除けば音響は良いのでは、と思う。

佐村河内守さんも来場された。
初めに、世界初演となる弦楽のための<<レクイエム・ヒロシマ>>
J.S.バッハポリフォニーで彩られたとてもメロディの美しい作品だ。

そして、交響曲第1番"HiROSHiMA"
個人的にとりわけ好きな場所を挙げれば、CDだと第2楽章6分30秒以降のコラール。個人的には、ホルンで一番の聴きどころでもある。そして、同じく第2楽章23分12秒からのトロンボーンで始まり、トランペットが掛け合う「神との対話祈り」の調べ。第3楽章からは、11:55のカタストロフ、そして王道ともいうべきフィナーレを飾る天昇コラール。
いずれも素晴らしかった。
演奏終了後、佐村河内守さんが、指揮者と固くハグし合い、そして、オケの皆さんを丁寧に讃えていた。
会場で、スタンディングオベーションをされた方は、全体の4-6割。涙を流している方もちらほらいらっしゃった。当日行けなかったで、1-2割空席があったように思う。オクに券が流れれば、もっと多くの方々が聴きに来られたに違いない。少なくとも、私は今回、オクで手に入れたのでそう思ってしまう。
私のいたフロアは、6-8割がスタンディングオベーションに参加した。私も若干遅れてその輪に入った。といっても、全体の1-3割がスタンディングオベーションしていた頃なので、早いタイミングでスタンディングオベーションしていたと思う。私は、ありがとうの思いを込めて、大きく手を振った。それを見て、佐村河内守さんが、お辞儀をしていた姿が忘れられない。私も、その時お辞儀をした。本当は、「ありがとう」と大声で叫ぶことも考えた。ただ、それはKYだろうということで、それは避けた。聴衆に向かっても何度もお辞儀、会釈を繰り返され、「どうぞ、座ってください」とジェスチャーで訴えかけられた姿も忘れられない。その振る舞いを見れば見るほど、スタンディングオベーションの輪は広がっていき、10数分間、拍手が止むことはなかった。手が痛かったのであるが、それ以上に、佐村河内守さんへ、ありがとうと伝えたかったので、拍手しつづけている私がいた。

長時間の拍手とスタンディングオベーションは、氏が来場される演奏会では、今後通例となっていくかもしれない。氏への感謝の思いを込めて。感動をしたことを身を持って伝える手段として。また交響曲第1番"HiROSHiMA"広島での部分初演の時がそうであったし、これは通例となるかもしれない。そうしたことを示唆するコメントをweb上で見た気がするのだけど、どこにあったか思い出せない。
満席になっていない演奏会へ赴く時以外、生の演奏会はいいかなと個人的に思っている。オーディオで音質を近づけることもできることもあるのだけど、映画のスクリーンと同じ非日常の空間であり、その空気に馴染めなかった。また染まりたくないと思う自分がいた。いずれにしても、ライヴの空気を味わうことはとてもいいことであり、知ることができて良かった。またこうしたプロセスを経ることで、19世紀、コンサートホールで行われる演奏が神聖な場所として扱われた理由がわかる気がする。その裏にある、現実に目をそらさせる何かが、個人的には、嫌であり、馴染めなかったのだ。だから、今後も行くにしても、的は非常に絞ると思う。



その後、東京ミッドタウンへ。
野本由紀夫氏のトークショーには、ミューザ川崎からの帰りの方が7割を占めていた。一週間前の新潟りょーとぴあの演奏にも言った方がいた。また、すべての演奏を見ている猛者もいた。「ただイマ」を見た方は少なかった。私の場合は、まさかの熟睡で観れなかったのだけど。今年3月末Nスぺ以降を見ている方は非常に多かった。最初の品薄のきっかけとなった「ただイマ」よりも、3月末のNスぺ以降のメディア露出の方がインパクトは大きかったようである。もちろん、私は、ミューザ川崎からの帰りかつ、今年3月末のNスぺ以降を一通り見た中の一人。この会場で手に入るブックレットがトークショーのテキスト代わりとなっている。私は、ペンを持っていなかったので、i-Phoneに補足分は、メモをした。
このブックレットは、交響曲第1番"HiROSHiMA"に関する最も最良の楽曲解説だと思うので、行かれた方は、手に入れることをお勧めしたい。

交響曲第1番"HiROSHiMA"第3楽章の淨書譜が見られる。他の作品の自筆も見られる。個人的に、印象的だったのは、管弦楽のための<<ヒロシマ>>
展示の期間中に、ネタバレを書くわけにはいかないとおもうので、2点。
全聾以降の作品リストで聴きたいと思ったのは、ピアノ・ソナタ第1番、ピアノのための<<死霊・第1章>>、管弦楽のための<<ヒロシマ>>、そして交響曲第2番である。
2点目は、東京ミッドタウンにも佐村河内守さんは、来場されていた。氏の父・母・奥様と一緒に来られた。そして、サインを頂ける時間が作られた。
そしてサインの時、手話の通訳の方を交えての中、鬼武者のサウンドトラックが大好きであること。私も人から理解されにくいハンディを背負って生きていること。私自身が勝つこと。生きて下さい。そんなことを、話した。その後、名前を聴かれ、東京ミッドタウンの会場のブックレットで、佐村河内さんの白黒写真に、上下余白があるページにサインを入れて頂いた。『Kasshiniへ 私たちに"小さな光"がありますように (省略) 佐村河内守
その後、氏と力強い握手を交わした。氏の手は、驚くほど、温かかった。この時、私にとって、氏は、音楽の世界における師であり、先輩ともなった。
私は、この時の思いを忘れないでいようと思う。かけがいのない時間をありがとう。
心身に掛かっている負荷を考えると今日の演奏会参加、それ以降の作品の完成が不安にもなる。氏は、閉場するときまで会場にいらっしゃったのだから。色々な意味で、氏のパワーに圧倒された。
今朝、職場の経営者にそんな話をすると、ともにいつ死が来るかわからない体である為か、「いつ死ぬかわからないから、そうして一生懸命に生きている」。最近見た作品だと、「風立ちぬ」「夜と霧」を彷彿とさせる言葉だ。

この日、ブックレットを2冊買ったので、いいビジネスしていると思ったりする一方。私の中で、忘れられない一日となった、展示の内容は、終わった頃に、凝縮+リライトして触れようと思う。

素敵な時間をありがとう。
この日、かけがいのない、先達がまた一人増えた。そのことに、改めて感謝。