Zemlinsky Sinfonietta a-dur Op.23

ツェムリンスキーのシンフォニエッタ。1934年作曲。私が手に入れた未完のオペラ『カンダウレス王』とは、作曲年に1-2年程しか差がない、晩年の作品である。叙情交響曲を作曲してから、12年が経っている。叙情交響曲を手掛けた頃には、調性を保ちながらも、ポリ・ハーモニー、ポリ・モードの嵐。また部分的無調も頻出してくる。この作品は、より無調になっている場所が増えている。少なくともカンダウレス王並にそうした和音が出てくる。乾いた叙情性は、ヒンデミットやレーガーにも通じているように思えてくる。年少のヒンデミットやワイル、ショスタコーヴィチらにも比すべきモダンでシニカルな要素が散りばめられており、シェーンベルクアドルノにも評価された。1936年に完成された弦楽四重奏曲第4番op.25と同じく、響きの純粋な美しさを求めるが故に調性を離脱した無調世界への著しい接近が見られ、暗く厳しい和音の衝突と、風前の灯のごとく消滅寸前の不安定に変転する調性、鋭く過酷なリズムが大きな特徴である。そこにあるものはピュアな響き、精神の葛藤、そして前衛性である。甘いメロディ以外で、彼独自の世界と言える作品は、やはりこの晩年の作品たちかもしれない。大地の歌より、叙情交響曲の方が好きな人間だけど。



Alexander von Zemlinsky - Sinfonietta op.23 - 1st movement

Alexander von Zemlinsky - Sinfonietta op.23 - 2nd movement

Alexander von Zemlinsky - Sinfonietta op.23 - 3rd movement


比較
ツェムリンスキー カンダウレス王 冒頭

Zemlinsky - Der König Kandaules (excerpt of act 1)
言わずもがな、ツェムリンスキーの終着駅にして、完成すれば、アドルノシェーンベルクから評価されたであろう作品。彼の作品で最も表現主義的。


ヒンデミット 室内音楽 室内音楽第1番 op24-1 (12の独奏楽器のための)

Hindemith : Kammermusik nr. 1 op.24, 1 per 12 strumenti
ヒンデミット初期にして最も表現主義的な作品。といっても、完全に調性を失くしているわけではない。メロディは4度進行、和音も4度を積み重ねた和音になる。もちろん12音は、ほとんど使いきっている。
一時期、取り込んでいたのだけど、結局興味がなくなったため、削除した。晩年の作品を聴くよりも面白いと思う。ただ本当に、シニカルかつ諧謔的な曲である。


ショスタコーヴィチ ヴィオラソナタ 第2楽章 スケルツォ

Shostakovich : Sonata for Viola and Piano 2nd movement Allegretto
今回の比較曲の中で最もメロディアス。メロディが飛び跳ねるヴィオラ、激甘辛リキュールのような毒の入った甘美なピアノの掛け合いが壮絶を極める。美しいし、テンポが遅いところは深遠哲学的で、色彩感もメシアン、ディティューから見るとショスタコーヴィチは劣るため、現在私のなかでのショスタコーヴィチ唯一の愛聴曲となった。これも12音を、ほとんど使いきっている、なんと諧謔的な調べ。