仏教とトランスパーソナル心理療法

まず、はじめにトランスパーソナル心理療法とはなんでしょうか?と思う方が多いと思います。

そこで、トランスパーソナル心理療法の定義について列挙致します。

1:人間存在を全体的な存在として見る。
2:他のアプローチとの最も大きな違いはテクニックにではなく、セラピストがスピリチュアルな視点を持っているか否かにある。
3アイデンティティや自己の感覚が宇宙大に拡張していく、神秘体験などのトランスパーソナルな体験の価値を積極的に認めていく心理療法である。


【トランスパーソナル心理療法入門 諸富祥彦[編著](日本評論社) 第1章 トランスパーソナル心理療法とは何か ―その定義、条件、セラピストの姿勢  この章は諸富祥彦著 P3】

それでは、仏教と心理療法との関連性についてあげてみます。

佛教は我々に、人生は迷いである、人間としての身をもって生きることは苦であると目覚めさせ、諦め(明らかに見極め)させることによって、人間苦を超克した絶対楽の世界に生かしめようとする実践道、仏道、自覚道である。このところがしっかり確認できさえすれば、仏道をトランスパーソナル心理療法のなかの一道としてみることは素直に納得できるのではないか。心理療法やカウンセリングは、個々の人間が何らかの意味で実存としての苦悩に気づき、気づきを深めることによって苦悩を克服していくことを援助する実践道なのだから


【トランスパーソナル心理療法入門 諸富祥彦[編著](日本評論社) 第14章 浄土真宗とトランスパーソナル心理療法姿勢 この章は西光義敞著 P256-P257】

佛教的カウンセリングの基本的性格は、平たくいえば、カウンセラーが佛教的自覚に立ち、クライエントに佛教的配慮の態度をもって接することであろう。佛教的自覚と佛教的配慮との関係を佛教の専門用語で表現すれば、「智慧」と「慈悲」との関係である。(中略)
大乗仏教の経典の中には、自利利他の精神から発する菩薩行、慈悲行としての実践的徳目が様々な角度から詳細に説かれている。(中略)それらの徳目を現代の対人援助的実践の上に具体化していく努力をすれば、ことさら「佛教カウンセリング」などと言わなくても、仏教精神は現代社会に生きて働くことになることは疑いない。


真宗カウンセリング」は、私のこれまでの経験では、態度条件を重視する「クライエント中心療法」および「パーソンセンタード・アプローチ」ともっともよくなじむ。
(中略)「佛教カウンセリング」は法(真理、真実)への目覚めを基調とするカウンセリングであると言ってもよかろうか。


【トランスパーソナル心理療法入門 諸富祥彦[編著](日本評論社) 第14章 浄土真宗とトランスパーソナル心理療法姿勢 この章は西光義敞著 P261-P263】

「一対一の対話」も、破折精神・慈悲の点から行われるものであり、対話の中で、励まし合い、時には互いに叱咤を入れ愛ながら、切磋琢磨しての対話は、最終的に互いに高め合い、成長する糧となります。
「佛教カウンセリング」とは、共通性が多いと考えた次第です。
この章の著者は、浄土真宗の人間ということもあり、受容性が高すぎることがネックであります。しかし、こうした共通項は、知り実践していくことは、良いことと、考えます。

唯識は、人間成長の段階として自我の確立を超えて、自己実現、更には自己超越の段階を認める、ウィルバーの統合心理学とは非常に親和性が高いといっていいだろう。また、「セラピー」という用語を、自我の再確立=自己治癒だけでなく、自己実現からさらに自己超越へと言う人間性の成長を促進する技法すべてに当てはめれば、唯識を自己超越的な思考を持つセラピーと捉え治すことも十分可能である。


唯識は欧米の心理学・心理療法と重なる面、相補的な面をもっている

実践としてはまず理論のしっかりとした理解を促進し、知的にではあっても、すべてのもの(者・物)を、自分とばらばらに分離したものではなく、つながり、1つであるものとして見るというトレーニングを行う(このあたりについては、論理療法。認知療法アドラー心理学などと触れ合うところが多いと思われる)。
座禅の実修によって、「空」的な体験に1歩でも近づくことを試みる。座禅は、既に多くの研究が示す通り、悟りに至らなくても、非常な精神安定効果がある(このあたりについては、自律訓練法、漸進的弛緩法などと、触れ合うところが多い)。
イメージ瞑想法も併用し、自分と他者や世界・自然との一体感を促進する。一体化の実感に応じて、しばしば自己信頼感、安定・安心感、他者とのトラブルの解消、人生についての空虚感・無意味感の減少ないし解消などがもたらされるようである。


【トランスパーソナル心理療法入門 諸富祥彦[編著](日本評論社) 第15章 唯識仏教とトランスパーソナル心理療法姿勢 この章は岡野守也著 P275,P279】

九識論と深層心理学を比較して気づくこととして、アプローチは異なれども、その洞察に関連性があることにいつも驚かされます。インドでは、遙か昔から、深層心理の探求が完了していたことに驚嘆を憶えます。
心理療法の実践には、佛教と共通する点が、多いことにも、驚きます。


私がトランスパーソナル心理学に興味を持ったキッカケとなった言葉を紹介します。

トランスパーソナル心理学は、「第九識」へとアプローチしているのではないでしょうか。むろん解明の方法や角度は違っていますが、生命のレベルという点では、このようにとらえることができましょう。


【運命は変えられる セルフ・コントロールのパワー 川田洋一(第三文明社) 第6章 運命を転換する方法―生命の基調を変える P151-P152】

初めて読んだのは206年の1月の終わりでした。205年の年末には、トランスパーソナル心理学関連の本を読みはじめ、深層心理学と九識論には、関連性があるのではないかと思い始めていた時に読んだために、これで卒論書いてみようと心に決めたことが懐かしいです。そして、今は、言葉に伝えることが元来ド苦手が災いしてつぶれています。今思えば、深層心理学と九識論には、関連性があるのではないかと思っていたことも後付けバイアスであったかも知れません。これらの本を読んだことは、私にとっては、その後に影響を与えた本です。これらの本で学んだことを、現実に生かして参ります。




トランスパーソナル心理療法入門 図解 運命は変えられる―セルフ・コントロールのパワー (目からウロコのさんぶん図解)


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