ベルリン・フィル・ラウンジ 第91回から
「ベルリン・フィル・ラウンジ」第91号:クラウディオ・アバドが死去
ここで、先日亡くなられたクラウディオ・アッバードの発言で印象的な言葉があった。
ウィリス 「今回、マーラーのアダージョとベルクの《ルル組曲》のアダージョを聴いていて、どちらがどちらだか、分からなくなる瞬間がありました」
アバド 「この2曲を勉強していて、私が何を考えていたと思いますか。マーラーの第10番は、和声法において《ルル》よりもさらにモダンだ、ということです。驚異的な作品です。私はベルクも大好きで、彼は当時において非常に新しかったと思いますが、マーラーはその先を行っています」
ウィリスは、このインタビューの聴き手。
マーラー交響曲第10番は、和声法においてルルよりもさらにモダンだという言葉が印象的だ。
ひいては、それよりも10年以上早く書き残されたブルックナー交響曲第9番は。
マーラー、ブルックナーともに最も対位法が核になった作品で、プロットからいうと、それぞれの5番よりも近接しているかもしれない。
それぞれが、絶世の美しさを持ち、表現主義的バロック音楽と形容される点、カタストロフでは、ともに11半音の和音を一斉に鳴らすのも共通。多調、無調的なところも共通で、ブルックナー交響曲第9番では動機で12半音を使い切っているものが多い。また、マーラー交響曲第9番に関しては、それまでのマーラーにはなかった先進性を認めている。