糸より新垣隆 周辺域-Peripheryを聴く

佐村河内守氏が、現代音楽の革命者と呼んでいる新垣隆氏。
唯一聴けたCDが、高橋悠治氏が企画して結成されたグループ「糸」のデビューアルバムである。

演奏者は、高橋悠治(企画・構成、一絃琴/いちげんごと)、高橋和子(三絃/さんげん)、西陽子(筝/そう)、田中悠美子(太棹/ふとざお)、石川高(笙/しょう)、神田佳子(打物/うちもの)である。

全体的な印象としては、邦楽器でヴェーベルンを演奏すると言った趣。新垣隆氏が、はじめて邦楽器を用いた作品であったようだ。
太棹・三絃・一弦琴と思われる楽器のグリッサンドショスタコーヴィチ交響曲第14番のエンドで試みたトーン・クラスターのような特殊奏法も聴こえてくる。
途中で、笙がチャイコフスキー くるみ割り人形 行進曲を奏でその後も、様々な曲を引用していく。他のパートは、変わらずヴェーベルン風のモティーフを奏でる。それは、咆哮を呼び、調性と非調性のぶつかり合いによるカオスを生み出す。声によって、音楽が中断される様は、以前紹介した、

似ている。その共通項は、声によって、曲の進行が妨害されている点である。
ハプニングの挿入、調性、非調性を同時に入り混じらせるところが、この人の特徴のように思えてくる。
佐村河内守氏が影響を受けたのは、調性・非調性の入り混ぜ方ではないだろうか。
ハプニングは、声による音楽の遮断であったり、声によって音楽の流れをコントロールしていたり、全く関係ないことを語ったりするところに出てくる。YouTubeにアップされている invention or inversion 3では、ピンポン玉を落としている音も聞こえてくる。
非アカデミックな世界で生きている作曲家と、CDのライナーノーツには書かれている。
年1回のペースで、アンサンブル・ジェネシスといった演奏団体に曲を書いているようだ。
年一回行ける機会があれば行こうと思う。と言うよりも、行かないと聴けないからだ。