映画とヴィーン世紀末音楽に関して交えながら、Korngold Kings Row Soundtrackを

今、またヴィーン世紀末の音楽を聴き漁っている。
佐村河内 守 交響曲第1番「HIROSHIMA」の世界展で、佐村河内守氏の言葉で、これからいろいろな音楽に触れていく中で、いくつかのキーワードを得た気がした。
それは、苦しみの方が多くて、優雅で楽しい曲、諧謔的なスケルツォは書けないと言っている。モーツァルト以降のそういった曲を旅することもいいなと思えてきた。氏も、鬼武者 Rising-sun 2nd-Movementで、優雅でコケティッシュな曲想も実は書いているし、まだ耳が聴こえていた頃に手掛けた「秋桜(コスモス)」では、終始長調の曲があったことも耳にしている。今年中古のVHSがすぐに、Amazonから消えたので手に入れるのは無理だろうな。観たことがあるHesherさんを、うらやましく思う。

ヴィーン世紀末で、今注目しているのは、コルンゴルト、シュレーカー。代わり映えしないかな。
コルンゴルトのピークを、ヘリアーネの奇跡、その直系のような2つの世界の狭間でと考えると、交響曲嬰へ調は、その直系だと以前にも増して思えるようになった。
第1,3楽章をシンフォニエッタに差し替えて聴いていたのだけど、プロットそのものは、交響曲嬰へ調の方が上だ。演奏効果は、比べるまでもないのだけど。
よく耳にする、交響曲 嬰へ調はコルンゴルトとしては、あまり出来のよくない作品だという意見は、コルンゴルトの最高傑作で挙げられるヴァイオリン協奏曲、オペラ「死の都」と比べると甘美ではないもしくは甘美な個所が少ないからではないだろうか。ヘリアーネの奇跡では、バルトークが好んでいた拡大された調性や、ストラヴィンスキー、ミヨーが好んでいた復調、その派生形としての復旋法がふんだんに使われていて、スターウォーズの音楽の雛型にもなった、故レーガン大統領が主演したKings Row、THE SEA HAWKコルンゴルトが、自作で最も気に入っていた映画「2つの世界の狭間で」を介して、弦楽四重奏曲第3番、交響曲嬰へ調でそのピークは迎える。交響曲嬰へ調では、ドビュッシーラヴェル等の影響を感じるゴングがとても効果的に使われ、第3楽章では、メロディー、ハーモニーも、佐村河内守作品と近い気がしてくる。だから、冒頭の、辛み、渋み、苦みの三拍子揃った音だけに惑わされてはいけないのではないだろうか、そんな風にも思えてくるのだ。ヘリアーネの奇跡では、悪役のテーマが、激しい不協和音と同時に滑稽に聴こえるところがあったけれど、映画音楽の中で、そして晩年の純音楽の中で、そうした滑稽な感じはなく、ひたすらおぞましいものになっていくのも、進化ではないかなと思う。楽天コルンゴルトが、どんな試練も最後は、明るく朗らかに乗り越えていくのさと言っているようにも思えてくる。そうして考えると、ヘリアーネの奇跡の音楽観を、交響曲に落とし込んだものともいえるように思えてくるのだ。もともとコルンゴルトの音楽は、悲劇のオペラを除けば、朗らかで明るい。そしてコケティッシュで、無邪気、ロココ音楽のように優美な音楽が常であったし、早熟であったことが、モーツァルトの再来と言われたゆえんだと思う。ミドル・ネームが、ヴォルフガングがあくまでゲン担ぎ。

同じようなところは、シュレーカーにも感じる。一般的にはR.シュトラウスサロメ」同様、R-18指定ものの、最もヴァーグナー風なオペラ「烙印を押された人々」次いで、近代フランス音楽の影響が強い「遥かな響き」「宝探し」と来て。演奏歴史の断絶と、耽美一色ではないために、「狂える焔」以降の人気は下がり未完のオペラ「メムノン」への前奏曲は察して知るべしという。これは、シュレーカーの音楽では最もエキゾチックだけど、このエキゾチックな雰囲気は、バルトークからの影響かもしれない。これは、想像でしかないけど。「狂える焔」で出てきた対位法的労作は、ここに感極まると言う印象だ。音抜けの良さは、いい意味でハリウッド映画的なのだけど、それはヴィーン世紀末の音楽に元々あっとものだと思う。とにかく大編成で、効果的に効率よく音楽を遠くへ届ける。ピアニッシモもきちんと大ホールで届けるために。それゆえのオーケストレーションではないだろうか。元々、ホール全体にオーケストラの音を届けるための技術がオーケストレーションなのだから。故に、コルンゴルト、シュレーカー、ラヴェルメシアンが、その最高峰として挙がるのは、違和感がないように思えてくるのだけどどうだろう。メシアンは、ここではドビュッシーストラヴィンスキーの究極系として。またメシアンは、スクリャービンの影響も間接的にあるので、挙げた。

今回は、スターウォーズが好きなブロ友が好きな音楽で締めようと思う。
アメリカ映画の根底には、ヨーロッパ系アメリカ人によるネイティヴ・アメリカンの支配が根底にあると言うけれど、そうした見方もできるようになり、パラドックスも見破りつつも、仏法に通じるところも、しっかり見て理解できるようになりたいと思っている。そのために、今映画を見るなら、戦場のピアニストを初めとした、それらのルーツとしてのポーランド映画、またヴィスコンティ監督の「ヴェニスに死す」を見たいなと思う。これから上映される劇場アニメならやはり「かぐや姫の物語」か。「風立ちぬ」でよく議題に挙がる、イタリア賛美は、基本的に色眼鏡だと思う。軍用飛行機好きかつ平和主義者と言う二面性は解決されているかといえば、矛盾をそのままさらけ出していると思う。そこから、ファシズム清算はできないないとする意見はあるけれど、懸命に生きる姿には心に響くものがあると思っているし、そうしたパラドックスは、私を含めたこれからの世代が、乗り越えていけばいいと思っている。だから、あえて気にしない。そんな2面性を曝け出す勇気に敬意を表したいと思う。ユーミンが、聖人君主ではない、二面性を持った人間が言うことに意味があると、言っていたように記憶するのだけど、事実良い問題提起になったと思うのだ。


では、Kings Rowより。父上と映画を見ているかもしれないけれど。

これは、コルンゴルト自身が指揮した演奏。演奏自体は良いのだけど、時代故に、ブラスが割れて聴こえるのが玉に傷。1分55秒付近のストリングスを聴いていると、そのまま鬼キャッチ―なヴァーグナーに聴こえてくるのが恐ろしい。これは、冒頭で奏でられるメインテーマのストリングスアレンジ。2分45秒付近は、後のヴァイオリン協奏曲のフィナーレにもその趣きは近い。ヴァルツは、花のヴァルツを、普通のヴァルツのリズムにしてゴージャスにしたような趣にも聴こえてくる。
雰囲気は、一番かもしれない。


ショルティ指揮マーラー交響曲第8番をレコーディングした敏腕エンジニアが録音していることもあり、各パートが明瞭に聴こえる。かつスタジオの空気感が伝わってくるのが凄くいい。演奏もいいので、オーディオの解像度チェックにも最適。周波数帯域バランスチェックは、STEELY DAN"AJA"に勝る録音は、さすがにないように思うのだけど。