サイモン・ラトルの「魔笛」がとてもいい

BDの存在は知っていたのだけど、youtubeに転がっている断片だけ聴いていて思ったこと。
一言、いい。
クレンペラーレヴァインベームショルティといった演奏と比べても極端に悪い印象はなく、夜の女王と言った配役で声量不足の声もあるけれど、映像を見た分には私は気にならなかった。
また、演出が興味深い。
というのも、ストーリーを知っている方他は御存じの通り、ストーリーの前半後半で、敵味方が変わり、ストーリーに稚拙なところがある点。
これが、悲喜劇とも取れる、モーツァルト自身は、諧謔劇と呼んだ「ドン・ジョバンニ」と比べてストーリー負けするところではないかと思う。
そのために、取られたアプローチとして、ザラストロと夜の女王が結託して、2組のカップルを啓蒙すると言ったストーリーに置き換えられている。
と聴くと、この演出によるストーリーは、善悪も、何もかも超越してしまったようだ。賛否はあるが、プロットがすっきりすることで、この演出には既に多数のフリークがいるようだ。

『魔笛』全曲 カーセン演出、ラトル指揮、ベルリン・フィル(2013) モーツァルト(1756-1791) HMV ONLINE - BPH130012を読み進めると出てくる、サイモン・ラトルとこの素晴らしい演出を手掛けたロバート・カーセンの言葉がとても興味深い。

ウィリス「(カーセンとの対話)今日はお越しいただいてありがとうございました。サー・サイモン・ラトルは、《魔笛》は難しい作品で、“演奏するのは墓穴を掘るようなもの”と言っています。実際、彼はこの作品を指揮するのを避けてきたのだそうです。演出家にとってもそうですか」

ロバート・カーセン(演出家)「そうですね。たいへん難しいと思います。“墓穴を掘る”というのはいい表現で、この作品には“死”ないし”死ぬ“という言葉が60回以上も出てくるのです。それはともかく、指揮するのも演出するのも難しい。というのは全体にとても断片的で、様々な側面があり、同時にシンプルだからです。シンプルなものというのは、非常に扱いづらいのです。展開のテンポを作りながら、シンプルであるというのは難しい」

ウィリス「バーデン・バーデンは仕事しやすかったですか」

カーセン「(にやりとしながら)本当の意見が聞きたいですか(爆笑)。いや、とてもよかったです。もちろん色々とたいへんなことは多かったです。というのは、登場人物が多いんです。18人もいるんですよ。でもそれがうまく行けば、《魔笛》はどんなオペラよりも素晴らしい結果を出せる作品だと思います」

『魔笛』全曲 カーセン演出、ラトル指揮、ベルリン・フィル(2013) モーツァルト(1756-1791) HMV ONLINE - BPH130012から

ここで出てくるウィリスという方は、この時司会された方であり、ベルリン・フィルの女性ホルン奏者とのこと。

第2幕は愛と官能をテーマとした舞台と言うコメント多し。
と言う訳で手に入れたいBDがまた1つ増えてしまった。