私が、好んで聴く前衛的な音楽

振り返れば、前衛的な技法と、バルトークが作り上げた十二音を調性音楽で扱えるようにした中心軸システムに影響を受けながら、メロディアスな作品が多いと思う。メロディがなくてひたすら前衛みたいな作品だと、不協和音がもたらす退廃的な耽美が出ている作品が多いと思う。

ロディアスな十二音音列技法を用いた作品だと、

ソプラノ独唱とトムトム、鞭、シロフォン弦楽合奏。歌詞はアポリネールによるもので、兵士とその姉妹の近親相姦をテーマとしたもの。

冒頭のシロフォンは12音からなる音列を奏でる。晩年のショスタコーヴィチが時折用いた12音技法のショスタコーヴィチ流解釈である。古今東西の12音音列の中で最もメロディに富んだ音列のひとつと言える。

交響曲第14番 (ショスタコーヴィチ) - Wikipedia

冒頭の雰囲気からして恐ろしく諧謔的だ。このシロフォンのメロディ自体が、恐ろしくキャッチ―でもある。途中変拍子に聴こえるところもある。
アルバン・ベルクからの影響を受けてここまで見事なメロディを作ること自体が偉大。ルル辺りの耽美な響きも顔をのぞかせる。思えば、ニートだった頃、この辺り、相当聴いたなと思いながら。


この作曲家の曲には、私自身思い入れがある。いわゆる十二音音列技法技法嫌いでも好きなひとがいることだ。絶対音感を持っていて、純正律主義者のヴァイオリニスト・作曲家であった故・玉木宏樹氏。私自身、存命時に、氏が書いていたはてなダイアリーでやり取りしたことがある。物言いは嫌いであったが、着眼点が面白いと言う印象があった。鎌倉スイス日記でもこうしたやりとりをした。私が、人生で一番前衛的な作品を聴いていた頃になる。無調の音楽とはがそれ。この時のコメント、コメント・トラックバック不可の為表示されないのが惜しい。鎌倉スイス日記を書いているSweizer_Musik氏は、プロの音楽講師であり、作曲家でもある。本名も色々なリンクを見れば、特定できてしまう方だあるが、ここではもちろん触れない。氏も、学生時代、この曲はよく聴いていたに違いない。ヴェーベルンに師事し、結果生まれたのは、その清澄感を受け継ぎながらも、調性的で美しいメロディーとハーモニー。

二重唱とカスタネットトムトム弦楽合奏。歌詞はリルケによるもので、人生の結びである死の賛美をテーマとしている。曲の最後ではヴァイオリンが10パートに分かれ、激しい不協和音を奏でる。これはリゲティやペンデレツキ等の用いたトーン・クラスターを模したものとされる。

交響曲第14番 (ショスタコーヴィチ) - Wikipedia

終わりは、様々な解説を見る限り、新ポーランド楽派の影響なしには、多分生まれなかったもの。
効果としての前衛がハマる好例。

バイオハザードのこの曲は、ショスタコーヴィチ 交響曲第14番のフィニッシュからの影響があるかもしれない。ジングルのような長さと言うこともあり、不安を煽る曲だけれど、以外とあっさり聴ける人もいるはず。ホラー映画だとこういう曲も多いし。

解説で、十二音が使われていることを確認済みの曲

この曲も、いい意味で前衛要素を感じさせないところが良い。感じさせない理由は、繰り返しが入っているからだと思う。

生粋の前衛的な作品からは、


ヴェーベルン ピアノのための変奏曲。極めて不協和。そしてあまりにも耽美だ。スクリャービン、世紀末ヴィーンで最も色々なスタイルを末期ロマン派風に束ねたシュレーカーの音楽に勝るとも劣らないと思っている。これ以上腐敗臭に満ち溢れた退廃的な耽美な作品があれば、ぜひ御教授願いたい!


ヴェーベルン 自由な無調=表現主義時代最も楽譜が短い作品。この頃、12音を使い切ると作品が終わってしまうとの言葉、その通りに作られているため、氏の最初の音列作品と見る見方もある。この曲もピアノが、あまりにも甘美だ。チェロからは、調性音楽のあらゆるルールから解放されることと特殊奏法を用いることで生まれる、恐怖の叫びが聴こえる。



オリヴィエ・メシアン 最後にして7管編成の超大作 彼方の閃光。オーケストラ作品で最も色彩的かつ演奏効果の高い作品の一つ。


メシアンのオルガン作品からは、聖体秘蹟への捧げものフィナーレを。

その他、オルガン音楽からは、メシアンの師、マルセル・デュプレ、J.アランから。こちらは、唯一前衛ではないが、オルガンの色彩を知るうえでいいと考えたため。

この曲からは、フランス近代オルガン音楽の粋が聴こえてくる。メシアン曰く「オルガンのリスト」

身内からは、病んでいると言われた。個人的には、J.S.バッハを聴くよりもはるかにいいと思っている。鬼武者 大海の色彩感と似ているとは言えないだろうか。

私が、20世紀音楽でことさらにピックアップしたものは、極端に耽美かつ極彩色を極めていく路線もしくは、バルトーク風の転調と、十二音を主題に用いながらも根っこはあくまで調性音楽で、効果として部分的無調・多調・多旋法になったり、前衛を取り入れた作品が多いと思う。そしてその延長線上にあるような作品が、求めている作品なのだと思う。簡潔に言えば、諸様式の徹底的な弁証法的統合。そして美しいメロディ・ハーモニー、適切なリズムも止揚される。